SAP IBPは、クラウドベースのサプライチェーン計画ソリューションで、需要計画、供給計画、在庫最適化、セールス&オペレーションプランニング(S&OP)、リアルタイムのレスポンス計画を統合的に管理する。AIや機械学習を活用し、需要予測やシナリオ分析を高度化。リアルタイムデータを活用した意思決定支援、部門間やパートナーとの連携強化、変動する環境への迅速な対応を可能にする。これにより、サプライチェーン全体の効率化、コスト削減、サービスレベル向上を実現する包括的なツールを提供する。
SAP IBP(Integrated Business Planning)を導入している企業
- Microsoft – デジタルサプライチェーンを構築し、IoTやビッグデータを活用して需要予測と供給計画を強化。
- Hyundai Mobis – 在庫の削減と顧客要求への迅速な対応を目的にIBPを活用。
- ZF Friedrichshafen – 複数のERPシステムを統合し、グローバルな需要計画を実現。
- DMK Group – データプロセスを統一し、持続可能な生産を強化。
これらの企業は、需要計画の精度向上や在庫管理、オペレーションの効率化などを目指してSAP IBPを採用。また、製造業、自動車、消費財、小売業といった業界の多くの企業で活用。
SAP IBPの主な機能
1. 需要計画 (Demand Planning)
需要予測を高度化するための機能を提供する。
- 機械学習を活用した需要予測: 過去のデータや外部要因(天候、イベントなど)を取り入れた精度の高い予測を生成する。
- セグメント別の計画作成: 製品カテゴリ、地域、顧客セグメントごとにカスタマイズ可能な計画が可能。
- コラボレーション機能: マーケティングや営業部門との連携により、プロモーションやキャンペーン情報を需要計画に反映。
2. 供給計画 (Supply Planning)
供給チェーン全体の計画を最適化する。
- ネットワーク全体の可視化: サプライチェーン全体(生産、在庫、輸送)のボトルネックやリスクをリアルタイムで可視化。
- キャパシティ制約を考慮した計画: 生産能力やリードタイムを考慮し、現実的な供給計画を立案。
- シナリオプランニング: 需要の変動や予測外の事象(パンデミック、災害など)に対する複数のシナリオをシミュレーション可能。
3. 在庫最適化 (Inventory Optimization)
在庫水準を最適化し、コスト削減とサービスレベル向上を両立。
- 多段階在庫計画: 各サプライチェーン拠点で必要な在庫水準を計算。
- 安全在庫管理: 需要と供給の変動を考慮し、安全在庫を最適化。
- 廃棄コスト削減: 消費期限や製品ライフサイクルを考慮して在庫回転率を向上。
4. セールス&オペレーションプランニング (S&OP)
需要と供給を統合的に管理するためのプラットフォームを提供。
- 意思決定プロセスの統合: 営業、マーケティング、生産、物流部門が同じプランニング環境で連携。
- リアルタイム分析: 計画データの変更が即座に反映され、迅速な意思決定が可能。
- パフォーマンスモニタリング: KPIトラッキング機能を活用し、計画の実行状況をモニタリング。
5. サプライチェーンレスポンス (Response Planning)
突発的な需要変動や供給問題に迅速に対応する。
- リアルタイム対応: 予測外の事象に対して迅速に代替案を提案。
- 優先順位設定: 顧客セグメントや利益率に基づき、最優先事項を自動的に判断。
- コラボレーション: サプライチェーン全体で共有されるプラットフォームを通じ、迅速に対応方針を決定。
6. 統合型ダッシュボードとアナリティクス
意思決定を支援するための高度な分析ツールとダッシュボードを提供。
- リアルタイムデータ: クラウドベースで最新のデータを取得・分析可能。
- 予測分析: AIを活用して、将来のトレンドやリスクを予測。
- カスタマイズ可能なレポート: ユーザーのニーズに応じたレポート作成が可能。
7. コラボレーションプラットフォーム
部門間や外部パートナーとの連携を強化する。
- 共有ワークスペース: 全ての計画担当者がアクセス可能な統一プラットフォーム。
- コメント機能: 計画データに対するフィードバックや提案を簡単に追加可能。
- アラート通知: 重要なイベントや異常値が発生した際にリアルタイムで通知。
8. リアルタイムシナリオプランニング
変動の激しい環境に適応するためのシミュレーション機能を強化。
- What-if分析: 計画変更による影響をシミュレートし、最適な戦略を選択。
- 費用対効果の比較: コスト、収益、サービスレベルのトレードオフを分析。
- 複数シナリオの保存: 様々な仮定を基にしたシナリオを保存し、比較分析を実施可能。
IBP保有アルゴリズム
IBPの予測モデルには複数のアルゴリズムを実装。
単純平均, 単純移動平均, 加重平均, 加重移動平均, 一次指数平滑法, 二次指数平滑法, 三次指数平滑法, 一次指数平滑法のアルファ係数の自動適用, (自動指数平滑), 適応応答率指数平滑, クロストン法, クロストンTSB法, ベストフィット, 自動ARIMA / SARIMA, 自動ARIMAX / SARIMAX, ブラウン線形指数平滑, 決定木の勾配ブースティング, 過去の期間のコピー, 季節的線形回帰, 重回帰, デマンドセンシン
SAP社資料(2019)より抜粋
導入アプローチ
- ビジネス要件と目的の明確化
ゴール設定: どのような課題を解決したいのか(例: 需要予測精度向上、在庫最適化、サプライチェーン全体の可視化)。
対象業務の範囲: IBPをどの業務に適用するか(例: 需要計画、供給計画、販売・在庫計画)。
KPIの定義: 導入後に測定する主要業績指標(例: 在庫回転率の向上、需要予測誤差の低減)。 - 現在のシステム環境と統合
既存システムの分析:他のSAPモジュール(ECC/S4HANA、APOなど)や非SAPシステムとの連携要件。マスタデータ(品目、顧客、サプライチェーン構造)の整備状況確認。
データ連携:Cloud Integration(CPI)やSDI(Smart Data Integration)を利用したデータフロー設計。
IBP専用のテンプレートやAPIの活用。 - プロセスの標準化と最適化
業務プロセスの見直し: 現行の計画業務フローを分析し、IBPに最適化する形に再設計。
標準機能 vs カスタマイズ:SAP IBPの標準機能で対応可能か、カスタマイズが必要かを検討。カスタマイズの際は将来のアップグレードへの影響も考慮。 - 技術的要件の整理
システム要件: クラウド型サービスのためのインフラ要件(ネットワーク接続、セキュリティ)。
データモデル: 計画データ、実績データ、シミュレーションデータの格納形式と運用方法。ユーザーアクセスと権限管理: ロールベースの権限設定とユーザー管理。 - トレーニングと組織対応
ユーザー教育: 操作トレーニングや、計画業務の考え方に基づいた教育プログラムの実施。
組織の準備: 導入後に新しい計画業務を担うチームや役割の定義。チェンジマネジメント: 従業員の受け入れ態勢の確保と、導入に伴う業務変更の対応。 - プロジェクト計画
スコープの定義: 導入範囲を明確化し、フェーズを分割(例: 需要計画から開始して供給計画へ拡大)。スケジュール: プロジェクトの主要マイルストーンを設定。ベンダー選定: SAPパートナーやコンサルタントの選定と役割分担。 - 費用対効果とリスク管理
TCO(総所有コスト): ライセンス費用、クラウド利用料、導入コスト、運用費用の試算。
ROIの評価: 導入による具体的な効果(コスト削減、売上増加など)の試算。
リスク管理:データ移行やシステム移行時のリスク。計画業務がシステム変更に対応できない場合のリスク。 - 継続的改善の仕組み
定期レビュー: KPIの進捗をモニタリングし、必要に応じて計画を修正。追加機能の活用: IBP内の高度な機能(例: 機械学習を活用した需要予測)の導入検討。
メンバーによる過去導入支援
- 医療機器会社向けIBP導入支援
- 医療機器会社向けPSIシステム構築支援(BPC)
- 自動車会社向けS&OP計画プロセス構築支援(BPC)