Ariba Supply Chain Collaboration (Ariba SCC) は、サプライチェーンにおけるバイヤーとサプライヤー間のコラボレーションを効率化するために設計されたクラウドベースのプラットフォーム。SAPが提供するAribaネットワークの一部として機能し、調達から納品までのプロセスをデジタル化して一元管理する。
典型的な利用シーン
- 製造業: 部品供給の納期管理、需要変動への対応。
- 小売業: サプライヤーとの発注・納品の調整。
- ヘルスケア: 医療機器や薬品のタイムリーな供給確保。
Ariba SCCは、グローバルなサプライチェーンを持つ企業にとって特に有用であり、リードタイム短縮や業務効率化、リスク管理を目的とした導入が進んでいる。
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出典:https://community.sap.com/legacyfs/online/storage/blog_attachments/2021/10/pic-3-process-list.png
1. 調達(Procurement)関連機能
- 発注管理(Purchase Order Management)
バイヤーが発行した発注書(PO)をサプライヤーがリアルタイムで確認、承認、または変更リクエストを提出可能。これにより、紙ベースの処理やメールでのやり取りが不要になる。 - 受注確認(Order Confirmation)
サプライヤーが発注内容を確認・承諾し、納期や数量の変更提案が可能。これにより、調整が迅速化。 - 納品指示(Advance Ship Notice, ASN)
サプライヤーが出荷前に納品予定の詳細を提供。これにより、受け取り側が事前に準備可能。
2. 在庫管理(Inventory Collaboration)
- 在庫レベルの共有(Inventory Visibility)
バイヤーとサプライヤーがリアルタイムで在庫情報を共有。過剰在庫や欠品リスクを軽減。 - 消費ベースの補充(Consumption-Based Replenishment)
バイヤーが実際の消費量に基づいて補充リクエストを自動的に生成。効率的な在庫管理が実現。
3. 需要計画(Forecast Collaboration)
- 需要予測共有(Forecast Sharing)
バイヤーが需要予測データをサプライヤーに提供し、事前に生産・供給計画を立案可能。 - 柔軟な調整機能
需要変動に応じて、サプライヤーが計画をリアルタイムで調整。
4. ロジスティクス管理(Logistics Collaboration)
- 輸送計画と追跡(Transportation and Tracking)
出荷予定や輸送のステータスを一元管理し、バイヤーが納品状況をリアルタイムで追跡。 - 配送スケジュール管理(Delivery Scheduling)
バイヤーとサプライヤー間で配送スケジュールを調整し、受入プロセスの効率化を支援。
5. 品質管理(Quality Collaboration)
- 品質通知(Quality Notifications)
納品時の品質問題や不適合が発生した際に、リアルタイムでサプライヤーに通知。是正措置を迅速に実施可能。 - 検査レポート共有
検査結果や品質関連データを共有し、透明性を確保。
6. サプライヤーパフォーマンス管理(Supplier Performance Management)
- KPIの追跡(Performance Metrics)
納期遵守率、品質水準、コスト管理などの指標をバイヤーがモニタリング。 - パフォーマンス評価とフィードバック
バイヤーがサプライヤーのパフォーマンスを評価し、改善点を共有。
7. 請求・支払いプロセス(Invoice and Payment Collaboration)
- 電子請求書発行(e-Invoicing)
サプライヤーが請求書を電子的に提出し、バイヤーが承認・支払いを迅速化。 - 支払い状況のトラッキング
サプライヤーが支払い進捗をリアルタイムで確認可能。
8. セキュリティとコンプライアンス
- アクセス制御
利用者ごとの権限設定により、機密情報の保護を強化。 - コンプライアンス機能
規制要件や契約条件に沿ったプロセスを実施するためのツールを提供。
Ariba SCC導入の留意点
Ariba SCCは導入実績が少なく、過去導入支援の経験から以下の点に留意いただきたい。
ERP上の入荷伝票は必須
ASN(Adovance Ship Notice)連携において、ERP側の受け口として、入荷伝票が必須となる。そのため、当該伝票をERP側で有効化しておくことが不可欠である。
Ariba側の開発は不可能ではないが、時間を要す
Ariba側で注文書などを発行したというニーズが出る。しかし、Ariba側の開発はSAP社に対し委託する必要があり、数カ月の時間を要することを前提にタスクを接敵することが必要。
ライセンスフィーが高額となり易く効果を初期から説明することが必要
Aribaのコンセプトとして、代理店を経由するビジネスから、直接購買に対する切替がある。そのため、ライセンスフィーはトラフィック金額の数%となる。Ariba活用に際し、ビジネスケースについては対象取引を含め慎重に議論することが必要。
Salerに対するAPIが存在する
サプライヤー側から見た際、自社の基幹システムがあるのに、なぜ別システムに手入力しなければならないのか、というのが交渉時に発生する。その点、Aribaはサプライヤー側が使用できるAPIが公開されているため、当該API連携をサプライヤーに早期に相談し、システム改修を図っておくことが必要。